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限界を超えて....

5月11日から撮影を開始し、7月時点で撮影総数が1000を超えた。目標3,000標本の3分の1に達した事になる。標本撮影と言う、比較的単純作業を繰り返しながら、撮影における様々な限界が見えてきた。今後は、この限界との戦いになりそうな予感がする。

撮影作業の実際

1.標本を棚から撮り出す
2.標本番号を記録
3.標本ビンのクリーニング
(必要に応じて、ラベルの張り替え、保存液の交換)
4.回転ステージに置く
5.スケール画像の位置決めと撮影
6.回転画像(36枚1セット5分)の位置決めと撮影
7.画像ファイル番号の記録

1〜3は、回転画像撮影中に準備可能である。しかし、撮影前の位置決めやストロボの位置などについては、各標本毎にその場で行わなければ成らない。おおよそ、大きさの揃った標本ビンでは、手間がかからないが、大きさのばらつきが有る場合は、撮影準備に時間がかかる。

このような手作業の部分と、自動回転撮影(約5分)を交互に繰り返して、1時間当り5〜8個の標本撮影が可能である。

5月11日から1日約6時間撮影を行った結果が右のグラフである。

ただし、撮影中の6時間は自動インターバル撮影の5分間の両サイドの時間をできるだけ有効に使わないとペースが維持できない。例えば、10分間の休憩を取ると、その分作業が中断し、ペースも崩れる。タバコを吸うにも、トイレに行くにも、コーヒーを飲みに行くにも、この5分間を使う覚悟が必要で、それ以外に時間帯に電話がかかってきただけでも、作業は中断する。


ストロボの限界

博物館には空調が無いので、夏の作業は過酷である。スタジオのような照明機器を使おうものなら一気に室温が上がって、大変な事になる。従って、照明はストロボに頼っている。1つの標本を撮影するのに、最低37回のフラッシュをたいている。その結果、現時点で約40,000回のストロボたいた事に成る。果たして、ストロボのバルブはどの程度もつのだろうか?以前、100万回と言う話しを聴いた事があるが、実際には既にトリガー用のストロボが一つダメになった。ストロボの価格は250ユーロだが、果たして壊れた時点で代替え機の購入が可能かどうか、やや疑問が残る。このまま壊れずに行って欲しいものである。

充電池の限界

3個のストロボに使う乾電池は、 NiHi単三電池で1セット10本必要である。大体、20〜30標本の撮影で容量が無くなる。個別のストロボで、別々のタイミングで消耗するので、チャージ音を聴きながら、そのずれが出た場合に、そのストロボの電池を交換している。チャージャーは日本から持ってきた急速充電タイプとこちらで購入した通常タイプ(日本では先ず見かけない)2台を使っている。これで、大体一晩1セット充電し、何とか持たせていたが、どうやらその限界に達したようだ。

7月10日に16本の電池と、2台のチャージャーを追加購入した。これで、常に2セットの充電済み予備をもてるので、1日連続40標本をストレスなく撮影できそうである。

カメラの限界

ニコンの一眼レフのシャッターの設計寿命は7万回と聴いた事がある。本プロジェクトでは恐らく12万回程度のシャッターを切る事に成る。果たしてシャッターは持つのだろうか?実は既にD2Hの露出計が死んでいる。これは、昨年夏にニコンが公表した不良箇所が原因しているらしい。こちらで修理に出す手間を考えると頭が痛い。取り合えず、日本に連絡して3台目のD2Hを送ってもらった。これで、3台体制が整ったので、3x7万回で何とか最後まで行けそうである。

シャッター回数が多い事が原因しているのか、CCDの汚れが目立つように成ってきた。CCD表面はブロアだけではなかなか綺麗に成らないので、ネットで専用のクリーニングツールを購入した。

回転台の限界

最近、電動回転台が時として誤作動を起こすように成った。一度は、回り続けて止まらなくなった。また、ストロボトリガーを無視する事が時として起こる。この症状が出た場合は、一旦スイッチを切って、全てのコネクタの確認を行うと直るようだ。どうも、コントローラの回路のコンデンサーに電気が残る傾向に成るようだ。きっと内部のアースが不完全なのだろう。手まめにリセットする事で何とかだましだまし使っている。

特注品の回転台がダメになった時に、代替え品を入手可能か?と不安だったのだが、最近、ネットでなかなか良い回転台を見つけた。

Magellan Desktop Turntable(http://www.kaidan.com/Detail.bok?no=98)

果たしてこれを買うだけの予算が何処にあるのか、不安であるが、いざと言う時に備えた覚えておく事にした。

ストレージの限界

ファイルサイズが、1コマあたり約1.4Mbで既に40Gを超えている。手持ちの80GのUSBドライブではどうやら収まりそうも無い。パワーブックの内蔵HDのスペースもいよいよ4Gを切り、そろそろ初期の画像データを消さなければ次ぎに進めそうも無い。250G程度の外部ドライブの購入が必須に成ってきた。

ストレスの限界

データベースのコンテンツを作る作業は、時として忍耐力が必要であるが、この作業を約4ヶ月間続けると言うのは、かなりのストレスである。従って、1000標本の撮影を終えた段階で、1週間の別の業務と更に1週間のバカンスを取る事にした。(7月上旬のグラフの横ばいの言い訳)

特に、現在の作業は画像を蓄えるだけの作業なので、なかなか知的労働とは言いにくく、サイエンスとしての醍醐味のあまり感ぜられない。まあ、昔の生化学者が微量のペプチドホルモンのアミノ酸配列を解析するためにブタを何万頭も解剖した話しなどを思い出すと、やはりこのような肉体労働もゴールを夢見る事ができるサイエンティストだが可能な作業かも知れないと、勝手に納得している。事実、助手のアンドレアは、プロジェクトを理解できていないようで、特に夏場になって働きが落ちている。やはり、研究が理解できない、人間には単純作業の連続とだけしか思えないようだ。

限界を超えて...

まあ、いろいろな不安要因は抱えているものの、最近は安定したペースで画像の撮影が続いている。限界に迫るからこそ、成果の異議が深まるのであって、そのための努力を惜しんでは行けない!と、自分に言い聞かせつつ、明日からも撮影に向うのであった。

(2006年7月16日)