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フレグレイ平野(Campi Flegrei)


ナポリ湾の北側、ポジリポ半島とミゼノ半島を結ぶラインの中央部に位置するポッツオーリを中心として広がる平野(とは言っても、火山性のクレータがごろごろ有る)をカンピ・フレグレイと呼ぶ。ナポリ市内からは、イタリア国鉄の地下鉄(Line 2)か、Cumanaと言う近郊電車で約20分、新宿ー調布間くらいの距離だ。

この辺りは、紀元前にイスキア島、プローチダ島を経て、ギリシア人がイタリア本土に最初に来訪した場所で、当時の地元民との戦いの末、ポッツーリを支配した。更に、その後ローマ軍もこの地からナポリのあるカンパニア地方に侵攻することになる。ナポリは、この地から移住した人が作った「ネアポリス(ニュータウン)」として栄える事になる。つまり、この地はナポリよりも歴史が古い地域なのだ。

フレグレイ平野絵画展

たまたま出かけた絵画展が「フレグレイ平野絵画展」だった。そこで気づいた事は、ポッツオーリ近辺から描かれた、プロチーダ島、イスキア島の風景画だった。16〜18世紀にかけて描かれた絵には、様々なパースペクティブでイスキア島が描かれている。それらの絵を見ていたらズームレンズを使った、実際に写真を撮るとどの様に取れるのか、その地へ行ってみたくなった。そこで、ポッツオーリ在住のエッツオに頼んで、半日ドライブに連れて行ってもらう事にした。

異なるパースペクティブ

撮影場所に選んだのは、サンジェルナーロ教会近くから海を望む場所だ。サンジェルナーロは、ナポリの守り神で、ローマ時代に一回失権し、ナポリの地を追われてポッツオーリに逃げ込み、ここの教会には首を切り落とされた時に血痕が残っているとされている。その後、サンジェルナーロは復権し、バチカンの聖人カレンダーに復活した。

さて、異なるレンズ(パースペクティブ)で撮影した写真を見てみよう。手前の街並みの大きさと、イスキア島の山の大きさを比べる事で、パースペクティブの違いが見えてくる。(残念ながら、適切な比較ができる写真は撮れていなかった。)その他の写真などを比べてみると、最上部のワイド画面の絵でも、少なくとも縦方向のパースペクティブは、相当の望遠レンズ並みのようだ。つまり、絵画では、人間の目で見た「主観的印象」によって、縦方向のデフォルメがなされ、結果としてイスキア島の山が立派な山に描かれてきたようだ。丁度、風呂屋の富士山の絵のようかもしれない。

上図は、35mm (52mm相当)で撮影した画像をパノラマ合成してワイド画面を再構成してみた。やや、絵画に似てくるようだが、縦方向のデフォルメは今一つである。恐らく100mm以上の望遠レンズで撮影した写真を手まめに合成すると、絵画的になるのかも知れない。

35mm (52mm相当) 80mm (120mm相当) 105mm (160mm相当)

いずれにしても、300年前に描かれた絵画と、それ程変わらない風景が残されている問いのは貴重だ。帰国したら、広重の版画で同じ事を試してみようかと思う。

火山地帯

ベスビオ火山は有名だが、フレグレイ平野も同じ火山帯に属し、火山性のクレータが一杯だ。観光名所のサルファターラ(硫気孔)では、硫黄の煙が噴出していて、温泉街の匂いがする。別のクレーターの斜面でも、暖気が拭き出す穴が多数開いている。クレータの外輪山を一周すると、火山灰と溶岩で作られた地層がはっきりと見てとれ、更にクレータ内部の南側と北側斜面での植生の違いも明確になってくる。健脚のエッツィオの案内で、一周2キロメートルの小型のクレータの外輪を回る事になった。更に、クレータにできた湖(一周3キロ)も、歩いてみた。

クレータ内部が硫気孔になっていて、温泉施設も作られている。 外輪山が2kのクレータの南向き斜面(右側)は北向き斜面に比べて、乾燥が激しく、火山灰が露出する。

アベルノ湖とアポロ神殿

上記の外周3kの湖は、アベルノ湖(Lago d'Averno)と呼ばれている。その縁に建っているのが、ローマ時代の温泉でもあった「アポロ神殿」遺跡である。18世紀に描かれた絵画では、もう少し完全な形を留めているが、その後度重なる火山性の地震で、現在では一部の外壁を残すのみの状態であった。

対岸から見たアポロ神殿跡 近くで見ると以外と大きい。壁の遺跡だけでも4階建ての高さは有る。建設当時は6階建てのビルくらいの高さは有ったのだろう。 18世紀に描かれた遺跡。現在よりは形状が整っている。

イスキア島から見た、フレグレイ平野

夏にバカンスで出かけたイスキア島から撮影したフレグレイ平野の写真がこれだ。右に見えているのがベスビオ火山、左に見えている丘がクレータになる。右端から突き出ている陸地は、プローチダ島の一部だ。ここからは、ベスビオ火山からの日の出が見られるらしい。なんだか、ダイアモンド富士と似た発想だ。ナポリの地は、長い事ベスビオ火山帯の活動に大きな影響を受けてきた。もともと石灰質の土地を豊かにしてくれたのが火山灰で、更に、火山性の温泉でこのイスキア島も賑わっているし、かつてのリゾート地であったポンペイも同様だったのだろう。

火山、地震、温泉、硫黄臭、日本人にとっては懐かしい感じさえする土地が、フレグレイ平野と言う事になりそうだ。

(2006年12月30日)