岩屋山


1827年3月29日、シーボルトと助手のビュルガー、画家のドゥ・フィレネーフェ、さらに奉行所から派遣された付き添い人も加わった一行が朝7時、出島を出て長崎市郊外の岩屋山(海抜475m)に出かけています。シーボルトはこの日観察できたアジサイ、イグサ、イチイ、ウバユリ、オオムギ、オキナグサ、キビ、クワ、ケンポナシ、コスミレ、サツマイナモリ、サトウキビ、シキミ、スギ、センダン、センボンヤリ、タラヨウ、ツルソバ、トビラ、ナンキンハゼ、バショウ、ハス、モウソウチク、モミなどの植物名を記録に残しています。

牧野シーボルトコレクション中にも、シーボルト自身が1827年に岩屋山で採集したと考えられるイヌガヤの標本(MAKS1881)があります。

第XI箱に収められているイヌガヤの標本(MAKS1882)のラベルに、“in monte Iwaja ad Nagasaki”と記されていますが、書き手はシーボルトです。これは30年以上の間をおいて岩屋山を再訪した1860年に採集した標本です。この時、シーボルトは息子のアレキサンダーを伴って再来日し、長崎市内の本蓮寺に仮寓していました。1827年の時に採集したイヌガヤと同じ株から採ったのでしょうか、息子のアレキサンダーも一緒にでかけたのでしょうか、想像の膨らむ標本です。


著作権:牧野標本館、2004